大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)2795号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人諌山博の上告趣意第一点について。

所論は判例違反をいうけれども、引用の昭和二四年(れ)一五六六号同二四年八月九日の当小法廷判決は刑法一〇三条にいわゆる「罪ヲ犯シタル者」は犯罪の嫌疑によって捜査中の者をも含むと解釈すべきものであるとの趣旨であって、捜査官憲が犯罪嫌疑によって捜査するに至らない段階の犯罪者を含まないとの趣旨までを判示したものではないと解するを相当とするのみならず、罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であることを知りながら官憲の発見、逮捕を免れるようにこれをかくまった場合には、その犯罪がすでに捜査官憲に発覚して捜査が始まっているかどうかに関係なく犯人蔵匿罪が成立するものと解すべきこと当裁判所の判例とするところである(昭和二七年(あ)一五四三号同二八年一〇月二日第二小法廷判決、集七巻一〇号一八七九頁)。従ってこの点に関する原判決の法律判断は正当であって判例に違反するところもない。所論は理由がない。

同第二点について。

所論は原判決の認定事実と異る事実を主張し、これを前提として原判決の単なる法令違反をいうに帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例